Daisuke yanasawa

柳澤 大輔(株式会社カヤック代表取締役CEO)

0→1が得意な人も固定されれば古くなる

question 01

サービスの作り方について、バリューが上がりそうなものを売却前提で作るのか、社風的にも利益とは別に面白そうだから作るのか、どちらが多いでしょうか?

カヤックには色々な人間がいるので両方のパターンがありますね。これまで21年間やってきているので、最初からここにこのサービス売ろうと思って作ったこともあります。

他との違いは、まずはプロトタイプを作るまでの予算をさっさと出すことだと思います。通常は事業をやる前にまずアサインをして予算を張って事業計画を作りますが、経営者は事業経験がたくさんあるのでその先々が見えてしまうけど、クリエイターは経験がないので戦略に弱いところがやっぱりあったりして、そのキャッチボールに延々と時間がかかってしまう。最初から自分が納得する事業計画になることなんでまず無いし、そういうものだと思っているので、シンプルでいいからまずプロトタイプを作ってもらって、その後に芽が出そうな事業には予算を出して、そこから事業計画を練ってもらうようにしています。

question 02

カヤックさんには「つくる人を増やす」というコンセプトがあると思いますが、創業期の早期の時点で売却実績をたくさん積み上げられていますよね。

最初に作ったサイトがサービスやサイトそのものを売却するプラットフォームで、自分たちで創ったものを売ろうというところからスタートしているので、事業を作って売却するということは常に意識しています。

意識しているのは、「お互い、いい買い物だったね」と言えるようにするということ。

M&Aって商売じゃないですか。だからどちらかが損をするというのは永続性が無い。売り側は高く売れてよかった、買い側は後々それが伸びるから高い買い物をするわけで、そうならないと次がないですよね。

ただ、事業を買って伸ばしてうまくいく確率って低いじゃないですか。実際はそんなにうまくいかないから、移った先でハッピーになることもあれば閉じることもあるっていうのは常に考えています。

question 03

売却のタイミングは?

売却のタイミングは非常に難しいですよね。事業も会社も、基本的に買う側からすると伸びてる時に買いたいし、売る方も伸びているときが本来一番高い値段がつく。でも売ろうと思っているときってだいたい下がっているときなので(笑)

そこがお互いマッチしないので、なるべくもっと伸びるけど、売った方がさらに伸びるんだろうなというタイミングで持って行くのが一番いいとは思いますね。

0→1が得意な人も固定されれば古くなる
価値を積み上げ人の流動性を作る

question 04

人依存ではなく売却しやすい組織作りを意識しているんでしょうか?

0→1が得意な人を見ていると仕組化して伸ばすということが苦手な人が多い。そういう人は0→1を作って売却して、また次のものを生み出すっていうスタイルが向いていますよね。

カヤックって会社全体が比較的それに近くて、インフラかコンテンツかで言えばコンテンツ寄りだし、新しい技術が出たらいち早く着手して何か面白いものを作る、っていう感じなので、その中で種みたいなものが出てきた時に、それを速やかに売却するっていうのは会社の性質的にも合っていると思います。

question 05

0→1が得意な人が揃っていて、さらに上場もしているっていう不思議さみたいなものがあるのですが、なぜこれが成り立っているのでしょうか?

0→1を生み出せる優秀なクリエイターがどれだけいるか、それが蓄積されることで規模大きくなるっていう前提のもとにやっているということなんだと思います。

大きく当たる事業もあれば利益率の低い事業もあってでこぼこする可能性があるし、0→1を生み出せる人って抜けていく率も高い。旬な時期というのもあって生み出せる人がずっと生み出し続けることができるとも限らないので、ある程度の流動性も必要です。

その上でしっかり組織に蓄積していく、現時点で増えているという状態があれば、利益が上がっているという見方をしています。

question 06

「流動性」が大事なんですね

イノベーションのジレンマですよね。0→1を生み出すのが得意な人が固定されてしまうと、逆にどこかで古くなっていってしまう。

人が積み上がっていくのはすごく大事なんだけど、何の価値が積み上がったことで人が増えるのかが重要で。お笑いで言えば吉本、みたいな圧倒的な組織としてのブランド、面白法人っていうものへの価値の積み上がりで、人が入ってくるっていう流れを作るというのがまず大事ですよね。

一方で土地に対する力もあると感じていて、それで今鎌倉という地域事業に力いれているんです。土地に対する発信を強めて、そこに住みたい人が増えればちゃんと一体化してくるので、さらに安定的に人が入って積みあがっていく。

採ろうと思えば一時的には採用できるんだけど、何かの拍子にいなくなってしまうとなるとそれは蓄積されたアセットではないのでブランドや地域と紐づくことは大事ですよね。

question 07

最後にスタートアップに向けたメッセージをお願いします。

当たった人は当たりやすくなっているので、次もまた当てられる可能性がある。我々としては社内起業もどんどん推奨してやっていくけれど、カヤックは0→1を生み出していく企業体質なので、外で積み上げてきた人もどんどん取り込んでいきたいんですよね。

売りたい人ももちろん歓迎だけど、バイアウトした人がもう一度おもしろいことをやりたい、しかも今度はカヤックと組んでやってみたい、そういう持ち込みもウェルカムです。

柳澤 大輔 プロフィール
1974年香港生まれ。慶応義塾大学環境情報学部卒業後、ソニー・ミュージックエンタテインメントに入社。1998年、学生時代の友人と共に面白法人カヤックを設立。鎌倉に本社を構え、鎌倉からオリジナリティのあるコンテンツをWebサイト、スマートフォンアプリ、ソーシャルゲーム市場に数多く発信し、さまざまなWeb広告賞で審査員を務める。ユニークな人事制度やワークスタイルなど新しい会社のスタイルを発信。2014年に東証マザーズ上場。2018年11月、地域から新たな資本主義を考える『鎌倉資本主義』(プレジデント社)を出版。

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