株式会社StartPoint
代表取締役
小原 聖誉

株式会社StartPoint 代表取締役 小原 聖誉

小原 聖誉 プロフィール

1977年生まれ。起業家・エンジェル投資家、株式会社StartPoint創業者・代表取締役。大学在学中に起業家のインターンに参加、ベンチャー企業の経営を間近で見たことで起業の道を志す。2013年AppBroadCastを創業。スマホゲームのマーケティング支援事業を独自のフレームワークに基づいて展開。徹底して凡人であることを前提に経営を行い、立ち上げたメディアは2年で400万ダウンロードを超えた。2016年、創業3年でmediba(KDDIグループ)へバイアウト。medibaにて新規事業役員CBDOののち退職。現在は自らの創業経験をもとにIT起業の支援・投資活動を行っている。

時流をつかめば無名の会社でも
多くの人にサービスを使われる
そこにスタートアップビジネスの面白さがあった

桐谷

まず、起業をすることになったきっかけは何だったのでしょうか?

小原

組織に属していたらそこでしか最適化されない人間になってしまう、やがては自分で会社を立ち上げたいと考えていた中で、学生インターンとして参加したのが1社目でした。2年目から副社長としてやっていくのですが、2001年にdocomoからガラケーの「503i」が出て、初めて携帯でアプリが動かせるようになったのが好機となりました。当時プログラムのファイルサイズが10kbで大がかりなものは作れないけど、アプリ自体は誰でも作ることができるし、端末もdocomoが存在する限り流通していく。それならやがては多くの人たちが使うことになって、暇つぶしでゲームをやる人も出てくるだろうと考えて、ゲームを検索する「アプリゲット」というサービスを創ったんです。

503iが出たのが2001年1月26日で、サービス開始が1月31日。どこよりも早くそのサービスを出しました。市場がどんどん伸びていくので、必然的にiアプリを使うユーザーも増えていって、無名で2人だけの会社でも多くの人にサービスが使われるという状況になり、その時にスタートアップビジネスのおもしろさを感じましたね。

ただ2007年頃からスマホが普及し始めて、2012年になるとガラケー市場は完全に成熟期に。多くの企業がスマホにコストかけていく時代の中で自分たちのビジネスは上手く転換ができなかった。そうなったら今度こそ自分で会社をやっていくしかなく、起業以外の選択肢が無かったので起業したというのが、AppBroadCast(以下、「ABC」)創業のきっかけです。

桐谷

ABCを創業し、KDDIグループに売却されるまでの経緯を教えていただけますか?

小原

ABCのビジネスはデバイスがスマホに変わっただけで、ユーザーやゲーム会社の課題感はこれまで携わっていたガラケーと大まかに同じでした。ただ創業する前の半年間、徹底的に自分が参入する市場について調べて専門家になったんです。その時、日本では今ではiosのシェアが大きいですが、当時はAndroidが63%のシェアを持っていた。にも関わらずAndroid向けゲームのマーケティングをやっている有力な会社は存在せず、まだ勝負が決まっていない市場であることを知りました。当たり前の話ではありますが、スタートアップビジネスにおいて成長市場の中で競合がいないところを見つけてやっていくということってすごく大切だと思うんです。

ガラケー成長期は、キャリアメニューの「ゲーム」というカテゴリの中でいかに上にいくかという事が重要でしたが、衰退期ではいかにライフタイムバリューの高いユーザーを取るかということが大事になってくるので、マーケティングも単純な広告出稿だけではなくファンサイトを運営したりする必要があり、マーケティングも複雑化してきました。
そんなガラケーの成長期、衰退期どちらも見てきた経験から、スマホ市場でも先回りしてライフタイムバリューの高いユーザーが集まるようなサービスを創れば生きながらえることができると考えた結果、やるべきことはプラットフォーマーであるKDDIと業務提携することでした。
ABCの資本金は当時200万円でしたが資本金の大小は関係なくて、市場にうけるネタであれば聞きたいと思ってくれる。専門家として今後Android市場がさらに大きくなることもしっかり語れたので、KDDIとビジネスパートナーとしてお話ができました。
大枠の提携が決まってから「ゲームギフト」というAndroidのゲームアプリを検索、紹介するメディアサービスをリリースしたところ、広告ゼロで初日にサーバーが落ちたんです。その時点でユーザーニーズがあることが確実になったので、4ヵ月後には全てのau端末にプリインストールされることになりました。そうなってくるとグロースは簡単で、毎年120~150万人のユーザーが増えてあっという間に成長していきました。

株式会社StartPoint 代表取締役 小原 聖誉
桐谷

その中で、なぜバイアウトすることになったのでしょうか?

小原

このサービスはゲームを上手く紹介して純広告を得るメディアではなく、ゲームの金銭的価値をインセンティブとしてユーザーさんに渡すビジネスモデルでした。ゲーム版のHOT PEPPERのような存在です。ゲーム上でユーザーが300円で購入しているものをクーポンとして渡す。なのでこのインセンティブを渡せなくなったらこの事業に未来は無いのですが、ある時Appleからインセンティブを渡してはいけないという話が出てきて、ゲームのクーポンが配布できなくなってしまった。累計400万人くらいに使ってもらっていたものが一気に勢いを失い始めてしまいました。

加えて、当時あるゲームアプリがすごく売れていた時期だったんですが、App Storeから数日間排除されてしまったことがあって、その理由がクーポンを配布しているからではないか、という噂が出始めた。もしかしたらそれも理由の一つだったかもしれないですけどその噂を聞いたゲーム会社が「ゲームギフト」にクーポンを渡すことはできない、と言い始める状況になってしまいました。
とは言え残っていた資産も当然あって、非常に多くのユーザーさんに使ってもらっていて特定の領域においては圧倒的にシェアがあるので、そのシェアをもとにした広告の商品開発ができた。それから国内トップレベルのゲーム会社さんとの取引も多数あって、当時AppleだったらAppStore、AndroidだったらGooglePlayストアだったところにKDDIも自分たちで「auゲーム」という、ゲームのマーケットを提供していたので、営業のチャネルやゲーム業界のインサイトが欲しかった。それらの残っていた資産の方も評価されて子会社になった、というのがバイアウトの流れです。

桐谷

苦しんだ結果にバイアウトがあったんですね。売却後、medibaに合流し現在のStart Point起業までの経緯を教えていただけますか?

小原

大企業にはユーザー向けの企画があったとしても社内の事情を照らし合わせるとなかなか口に出すことができない状況があります。だからこそ、その差分を活かしてスタートアップが勝っていけるのですが、中に入ると自分たちも同じ状況になってしまう。子会社の社長なので「意見を主張する前に義務を果たしていこう、組織のやり方に合わせていこう」と思ってしまう。全く得意じゃないことを始めるので上手くいくわけもなく、結果的に鬱病になり2ヵ月ほど休職しました。

その時、当時のmedibaの社長とお話をして辞めたいと伝えたところ、今まで手がけていたKDDIグループのゲーム領域に関しては手放して、新規事業の検討だけに特化してくれていいと言ってくれて。そこで役に立てなくて申し訳なかったという気持ちが救われましたし、元々0→1が好きだったので、スタートアップでは持ち得ないアセットを使って新規事業を作っていけるとしたら、それはすごくやりがいがあるなと感じて復職しました。

その後、その社長がKDDIを退職されることになり、自分の会社を買ってくれて、今の自分に引っ張ってくれた方がいなくなるのであれば僕自身もmedibaにいる理由が無いと思い、新たにStartPointを起業しました。とは言っても、実はmedibaにいたときから登記はしていたんです。2017年からエンジェル投資をしていたのですが、ただお金をあげる出資ではなくて、その人をしっかりと応援していくためにも個人としてではなく法人として出資する方がいいと考えていたからです。当時は会社としての活動は出資だけだったのですが、medibaを退職後、本格的に起業家と向き合う活動を始めました。

株式会社StartPoint 代表取締役 小原 聖誉

お金を出すのではなく起業家のペースメイキングをする
起業家のセカンドオピニオンのような存在

桐谷

エンジェル投資家にも様々なタイプの方がいますが、小原さんは現在どういった関わり方をされていますか?

小原

投資先の市場について起業家はエンジェルの自分よりも詳しいですし最もコミットしてやっているので、彼らの事業に対して自分が口を出す権利はない。ただCXOがいなかったり、経営者自身がサボりがちなところもあるので、社内からは言われないけど本人的には手を抜いているなというのがわかる時に、社内や株主には言えない話をしてもらってペースメイクすることで自分が役に立てることを実感しました。

その場合には、株主定例としてやってしまうと指示として受け止められてしまうこともあるので、必ずしも出資関係ではない方がいい時もあります。僕自身は指示ではなくて苦労した経営者として横からの目線で伝えているけど、彼らがそう解釈しないことには始まらないですよね。なので最近は、お金を入れずに起業家のペースメイキングだけをするという感じに少しずつ変わってきています。

VCの方達は起業家出身じゃないですし、大きいお金を出資してくれてメリットもあるけど起業家の気持ちに関しては自分事にするのは難しいですよね。起業家たちから相談された時に「最後はあなたが決めること」という感じになってしまう。
僕がそんな時に「自分だったらこう考える」ってことを起業家に伝えてみると、それが正しいかどうかは別として、起業家側からも化学反応して熱量が高いディスカッションが生まれるんです。議論が温まってくると起業家側から答えを出してくれるんですよね。セカンドオピニオンという表現が正しいかもしれませんね。

手を抜いてしまう自分に自ら監視役を設定していく
 「『妻と一緒に働く』が一番効果的です(笑)」

桐谷

『凡人起業ー35歳で会社創業、3年後にイグジットしたぼくの方法 ー』(CCCメディアハウス)を出版されましたが、小原さんにとって起業において大切なことって何でしょうか?

小原

起業は特別なスキルがある人だけがすることじゃないと思っています。どちらかと言うと資金繰りに奔走したり泥臭いことの毎日だったりするので、アイデアばかりがあるような人よりも実行できる人、やりきる力がある人の方が向いていると思うんです。
そして参入する領域が成長市場であり、3年間だけはしっかりとやりきるんだとマインドセットさえできれば、基本的にはイグジットそのものはできると思います。
自分を過信せず、手を抜いてしまう自分に対して自ら株主や社員、メンバーに報告する義務を負うこと、喜んで監視役を設定していくことが大切だと考えています。

凡人でもできるけれどもやりたくないこととして、「妻と働く」ということが挙げられると思うんですよ。実は創業した時、資本金200万円で妻が20万円、僕が180万円出資したのですが、その180万円は妻から貸してもらったんです。つまり実際はまるごと妻の会社みたいな感じだったわけですけど(笑)
そして妻にも一緒に働いてもらった。でも僕はそれを望んでやっていた。自分で大リーグ養成ギブスをはめていくことにしたんです。なぜならそのビジネスを3年間走り抜くために社内に監視役を置くんだとしたら妻を置くのが最も効果的だから(笑)

その前提としてあるのは、自分が凡人だと認識した者こそが、無知の知という状態になってしっかり戦い抜くことができるという考え方なんです。この「凡人起業」というのは、自分が凡人だ、あなたは凡人だ、ということではなくて「自分は凡人だと思って戦わなければいけない」ということです。自分を凡人だと捉えた上で、市場やお客様や社員、株主との関わり方や参入する市場の中でどう専門家になって業務提携を作っていくのか、ということが重要なんだと思っています。

株式会社StartPoint 代表取締役 小原 聖誉

インタビュアー 桐谷晃司

1964 年大阪府生まれ。関西大学を卒業し1991年人材コンサルティング会社の創業に始まり、3度の起業、1度の倒産、2度の事業売却を経験。2001年にインターネット関連会社・デジパ株式会社を創業し、社員10名以上が起業するプロ集団に。
2010年より南房総にNPO法人あわ地球村を設立し「半農半起業家」の東京との二拠点生活を開始。2018年スタートアップ支援を目的にスタートアップスクエア(株)設立。著書に「検索せよ、そして動き出せ」「いちばんやさしいWebマネジメント教本」

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