株式会社ベストクリエイト
Founder
川野 尚吾

株式会社ベストクリエイト Founder 川野 尚吾

川野 尚吾 プロフィール

1974年生。1997年慶應義塾大学理工学部卒。日商岩井(現双日)に入社し、衛星放送事業に従事。2006年株式会社ベストクリエイトを創業し同社代表に就任。店舗型アフィリエイトの草分けとして、国内9,600を超える携帯販売店舗と提携、2011年にM&Aにて同社をバイアウト。2012年からは上場企業であるアクセルマーク株式会社に参画、同社の広告事業担当取締役として従事。2018年12月に退任。ベンチャー投資も行いつつ、次なる事業機会を狙い活動中。

IPOもM&Aも選択肢の一つ
共に最初から「狙っていけるもの」

恵島

まず、バイアウトまでの経緯を教えてください。

川野

私は大学卒業後、1997年に日商岩井(現 双日株式会社)に入社しました。
その年日商岩井は過去最高益だったのですが、翌年には大きな損失を出し過去最低の業績になりました。
それまでは大手商社に入ったことで将来的にも安泰だと思っていましたが、蓋を開けてみれば入社翌年にはリストラしなければならないような状態。会社の規模って(安定とは)関係ないんだなという意識を明確に植え付けられた経験でした。

日商岩井では携帯電話販売の子会社に出向もしました。現場はノルマに追われ、料金プランも山のようにある大変な環境でした。
一方で、着うたやコミックなどの携帯コンテンツを販売する会社は、携帯上で会員獲得するとチャリンチャリンとお金が入るビジネスモデルを展開していました。
コンテンツ会社は会員を欲しがっている、我々販売店では日々お客様から「何か面白いコンテンツはないか」と相談を受けている。であれば、販売員が直接お客様にコンテンツをお勧めしてコンテンツ会社からキックバックを受け取れる仕組みを作ってはどうか。

私はこのビジネスを自社が運営する店舗のみならず、全店舗に拡大したいと考えました。そこで独立を決意し、商社に入っておよそ10年後の2005~2006年に友達4人で1円ずつ出し合って資本金4円で株式会社ベストクリエイトを創業しました。この会社は今も存続しています。
ところが事業は思うように進みませんでした。当時の販売店は携帯電話さえ売っていれば継続手数料が携帯キャリアから入っていたので、わざわざ顧客にコンテンツを勧めてキックバックをもらう必然性がありませんでした。
起業から1年~2年は給料ゼロの状態が続き、貯金を切り崩して生活していました。
それでも毎日地道に販売店に足を運び、徐々に我々のサービスが知られるようにはなっていました。

流れが変わったのは2008年です。総務省から「携帯料金0円キャンペーン」という販売方法の不透明性を指摘され、販売店はキャリアから継続手数料やインセンティブを受け取ることができなくなりました。そこで、コンテンツ会社からキックバックを受け取れる我々の仕組みが新たな収益源として注目され、問合せが急増しました。

これを機に、200~300店舗だった契約件数は、9000店舗まで拡大しました。当時日本国内に携帯販売店は14000店舗でしたから、7割ほどに採用されたことになります。
創業から5年後の2011年には約10億円近くを外部から調達し、会社の規模も大きくなってきたことから株式上場かM&Aを目指して意見交換をしている中で、ある上場企業から打診があり、最終的に株主の了解を得てM&Aを決めました。

恵島

川野さんの周りにはIPOをした経営者の方も多いと思いますが、川野さんから見たIPOとM&Aの違い、M&Aの魅力は何ですか?

川野

私がIPOかM&Aかの選択を迫られたのは2011年ですが、当時はIPOとM&Aの大きな違いを自分自身がそこまで深く認識していませんでした。
自分としてはとにかく事業を大きくしたい、このサービスを使って喜んでくれる人を増やしたい、その一心でした。
今になって、IPOをして一度は鐘を鳴らして(笑)、もっと大きく資金調達をしてやれたこともあったのかなと思うことはあります。
でも当時はその意識がそこまでなかったことでM&Aに抵抗なく進めましたし、しっかり事業シナジーも出せたので結果的には良かったと思います。
その後上場企業で3年近く取締役をし、上場企業の大変さ、難しさは身に染みるほどわかっているつもりです。IPOとはあくまで通過点でしかなく、そこには大きな責任とリスクが伴いますからね。

株式会社ベストクリエイト Founder 川野 尚吾
恵島

IPOを目指すべきキャラクターとM&Aを目指すべきキャラクター、経営者の性格や気質による違いはあると思いますか?

川野

最初からIPO向き、M&A向きの経営者という線引きはないと私は思います。結果論としてIPOに適しているかどうかは、ビジネスモデルや事業のポジションによるところが大きいと思います。この事業ならM&Aを狙ったほうが短期間でバリューがつくな、とか。
私はIPOもM&Aも選択肢の一つだと思っていますが、最初から狙っていけるものかというと、「狙っていけるもの」だと思います。

M&Aは市場からの評価よりも、どういう事業が買い手企業にとって必要になるだろうという視点を持ちながらアクションを考える必要があります。
海外ではM&Aが一つのエコシステムとして成り立っています。ようやく日本でも大手のIT企業が増えたことでM&Aがイグジットの形として当たり前になってきました。長期的なIPOという目線だけではなく、1~2年の短期でM&Aで勝負したい起業家にも門戸がどんどん開けてきていると思いますね。
大手企業やほかの人たちがまだ手を出しにくいと思って様子見ている領域にいち早く目を付けて誰よりも早く飛び込んでリスクを取ってやってみようと思う会社と、あそこが先にやっているから買い取ろうと思う会社、その両者がお互いにM&Aを狙って進めるというのは、戦略子会社を作ってやるようなものですよね。

恵島

M&Aありきで作る組織とIPOありきで作る組織の作り方の違いを教えてください。

川野

IPOはどうしても色々なリスクを事前に取り除かなければなりません。管理体制含めて様々な整備をする必要があります。それは前例通り、教科書通りに手順を踏んでやっていくしかありません。
それに対してM&Aでは、管理体制よりもスピード感、営業ルートの確保、特許などが評価対象になります。
また、M&Aで最も大変なのは、買われた組織に人事制度や考え方をいかにフィットさせるかです。そのためには組織に柔軟性を持たせることも重要です。

恵島

ご自身の経験を振り返って、ベストクリエイトが買収される前に整備しておけば良かったと思うことは何ですか?

川野

M&A先の企業とは、当時の営業手法や進め方をそのまま伸ばしていく方向で認識合せができていたのでフィッティングはうまくいったと思います。
ただ、私の後任となる人材を育てきれていなかったことは一番の反省点です。バイアウト以前に自分と同じ仕事を任せられる人間を育てるということに考えが至っていませんでした。

本来スクリーニングされるべきものが
されないまま世に出てきている

恵島

川野さんは現在エンジェル投資もしておられますが、最近の起業家はどこを狙っている傾向がありますか?

川野

今は色んな情報がWEBに落ちていますから、上場に何が必要か、M&Aの事例、注意点など起業家の知識は豊富です。
怖いのは、簡単に起業できてしまうがゆえに、また、簡単に起業を認めてしまう風潮があるがゆえに、絶対にうまくいかない事業ですら簡単にまかり通ってしまうことです。
資金調達がうまくいっている事例が多すぎて勘違いしてしまうケースが多いのは懸念ですね。

「だいたいこれくらいのタイミングで資金調達するとだいたいこれくらいのバリエーションが一般的ですよね?」という、誰から聞いたの?(笑)というような話もすごく多いです。
総合的に見て、起業で市場を活性化し、若い人がチャレンジする風潮はとても良いと思います。ただ、本来スクリーニングされるべきものがされないまま世に出てきていることは課題ではないでしょうか。

株式会社ベストクリエイト Founder 川野 尚吾
恵島

川野さんが起業した当時と比べてスタートアップの人たちは幸せになっていると思いますか?

川野

僕は羨ましさしかないですね(笑)。僕が起業した2005年当時、どうやったら会社を作れるのか、誰に相談したらいいのか、資金調達はどうしたらいいのか、情報が少なかったために踏まなくていい地雷を踏んだし、本来踏まなくていいステップも踏んだと思います。
今のスタートアップ環境は、例えばシェアオフィスで低コストにオフィスを構えたり、採用に関しても色んなツールが使えます。また、資金調達やコミュニティの入口もネットで簡単に見つかります。
デメリットはあまり思い付かないですが、起業がやりやすくなったことで競争は激しくなったと思います。相対的な比較対象が増えたことで自信を失う経営者も多いと思います。

恵島

川野さんは大企業とスタートアップの両方を経験されていますが、大企業とスタートアップの付き合い方についてどう思いますか?

川野

大企業も最近はスタートアップ支援のイベントを開催したり、自社のインフラを貸し出したりして、スタートアップとの関係性を保とうとする動きがみられます。
とはいえ規模の大きい会社にとってスタートアップが生み出す売上や利益は大きくはありませんから、彼らがそこに本腰を入れることはできません。だからこそスタートアップは、大手が着手できない、彼らの目の届かない領域、彼らがやりたくてもできないものを彼らの口から引き出していくのがいいと思います。

自分でアイデアを思いついて、こういうのをやってみたいというのもいいですが、大手がどういう課題を抱えているのか、それを先にヒアリングしてスタートアップ側から仕掛けていくというのはありだと思いますね。

恵島

私たちスタートアップスクエアでも、「未来デューデリ」という形で、買い手候補となる企業に事前にヒアリングをしてから事業をバリューアップさせるという取り組みを行っています。

川野

何年後にいくらで買ってもらおうというゴール設定は非常に重要ですね。買う側にとっては自分たちの事業とシナジーのあるスタートアップでないとM&A検討のテーブルには乗せられません。
僕がスタートアップ側であれば、まず買い手となる大手企業をターゲティングして、彼らが着手できていないことってなんだろうと考えます。誰にとってどういう価値を感じてもらう事業なのかということを先に明確にすることで、数年後のバリューは圧倒的に作りやすくなります。

恵島

川野さんの感覚値として、どのくらいの金額感であれば3年でM&Aしやすいと思いますか?

川野

なんとなくの感覚ですが、10~20億くらいまでは2~3年後のM&Aの出口戦略としてありだと思います。
そのくらいの規模感であれば、ある程度売り先のターゲットを決めて動ける範囲ですし、毎年数億を新規事業で溶かしているような会社であれば、10億で買えるのは安いと考えるほうがナチュラルな意思決定だと思います。
あくまで肌感覚ですが、これが30~40億になってくると、買ったほうがいいのか自分たちでやったほうがいいのかと天秤にかけたときに「自分たちでやる」選択肢を捨てきれない規模感だと思います。

株式会社ベストクリエイト Founder 川野 尚吾
恵島

最後にこれから起業を目指す人へのメッセージをお願いします。

川野

私が起業した当時と比べると今は色んな情報がネットから得られますし、コミュニティにも簡単にアクセスできるようになり、起業環境としては非常に良くなったと思います。
また、会社を興すという選択肢だけでなく、個人が自分の名前やキャラクターをブランド化できるようにもなりました。

会社を作るにせよ個人で戦うにせよ、支援者は必ず必要になります。やりたいことは自分から情報発信しなければ支援者は集まってきません。
ぜひ自ら手を挙げて情報を発信する人になってください。手を上げさえすれば支援してくれる人は必ず現れます。まずは手を上げることを厭わずにやってほしいと思います。

インタビュアー 恵島良太郎

1976年宮崎県生まれ。大学卒業後、システム開発会社、コンサルティング会社を経て2004年株式会社ROI設立。『ファンくる』をリリースし、主力事業へ。
2012年にマレーシアに進出のためクアラルンプールに移住。マレーシア進出支援事業と現地での外食事業も開始。2017年株式会社ROI代表取締役を退任、マレーシアを中心としたグローバル事業へ集中する。

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