狩俣 裕之(株式会社TeraDox Founder)
狩俣 裕之(株式会社TeraDox Founder)
question 01
実は会社を創ったときから売却前提で、そのことはスタッフにも公言していました。
会社の終わりって3つしかなくて、一つ目が倒産、二つ目がIPOで公器なものになること、そして三つ目がバイアウトして他人の手に渡ることです。私は、会社がある程度の規模になったときにより成長が見込める会社が現れれば譲渡する可能性があることを始めから宣言していました。それは結果的に良かったと思います。(事業売却を)初期メンバーに話したときも、「この時が来たか」とすんなり受け入れてくれました。
もちろん会社全体ではショックを受けるメンバーもいましたが、最終的には比較的スムーズに理解してくれたように思います 。
question 02
デューデリが始まった段階では全員が知っていました。
私から見るのと社員から見るのは当然違いますが、私から見る限りでは予想以上にうまくワークしていたように思います。
これは、売却する3年前に私がマレーシアに完全移住し、月に一度日本に戻るスタイルで経営していたことも良かったと思います。その3年がなく突然の売却だったら厳しかったかもしれないですね。私が物理的にマレーシアに行ってしまったことによって、自分たちでどうにかしなければならないという意識の変化は既にありましたから。
question 03
すごくチャレンジングで、地合が良ければ良い選択肢だと思います。
ただしIPOには向く事業体と向かない事業体があって、我々の事業の場合は、業界に特化したものであり業界を反映させ利益をあげていくというものでしたから、IPOには向かないのかなと思っていました。
question 04
例えばGEに代表されるアメリカの会社のように、プロ経営者がプロの経営をするのと、0→1で事業の形を作るのは別の仕事だと思います。
両方のスキルに長けている人であればIPOもいいと思いますが、一般的には、管理することと0→1で事業を生み出すことでは得意不得意が分かれます。
僕は0から考えて1にするのが得意で好きな人間。10年やっていく中で管理も楽しかったし面白い部分もありましたが、どちらが向いているかといったら、僕はやはり0→1の人間です。
question 05
(上場企業の社長には)0を1にするクリエイティブな能力は必要ないですよね。新規事業の部署を作ればいいので。僕が培ってきたスキルと違うし、僕の一番得意なところがいかされないから(オファーを受けるのは)難しいですね。
question 06
ないです、一度も。VCからお話いただいたことは何度かありましたが。
question 07
はい。全く違う業界で同じビジネスモデルを横展開していける可能性は充分にあったと思います。
でも僕はそれよりも、一度リセットしてまた0から新しいものを作るほうが面白いかなと自分で判断しました。
question 08
タイミング的に、(M&Aは)10年前より一般的になったと思います。とはいえ、売却を決めたと言ったら取引先からは「経営が厳しかったの?」と聞かれることも多くて(笑)。それが日本の実状だと感じました。 現在ディールに成功するのはほとんど黒字の会社です。黒字が基本状態。そんな中でもM&Aはまだまだ(日本市場に)浸透していないのだと思いました。
僕の場合、(IPOを狙わなかったのは)結婚が早かったのも大きかったかもしれません。自分がやりたいビジネスというよりは、ニッチなものを見つけてくるのが得意だったので、誰もやっていないけどニーズがあるものを事業にしてやり続けていたら規模が大きくなった。じゃあそれが本当にやりたいビジネスだったのか?と問われると違う。だからこそ、この先10年20年同じ事業を自分がやり続けるモチベーションよりも、もっと大きなモチベーションでやってくれる会社がほかにあるんじゃないか?という前提で事業をやってきました。
question 09
はい。350万の自己資金と銀行借り入れだけでした。世の中はドットコムブームで浮かれている感じはありましたが、それには乗らなくて良かったかなと思います。
ただ、ポータルサイト運営は最初の2年間ひたすら赤字でしかなかった。だから受託開発をやったりSEOや広告代理店事業をやったりして、その利益をポータルサイトに突っ込むということをしていました。
それは非常に良い経験でしたが、今考えると時間がもったいなかったと思います。
今のSaaS型やポータル型事業のスタートアップベンチャーは、資金調達をして最初から主力事業にフルフォーカスしているパターンが多く、それは非常に良いことだと思います。僕はすごく遠回りしましたから、主力事業に集中できるのは羨ましいですね。
question 10
僕は経理総務については最初からオンライン化していました。外部の税理士事務所にお願いしていた部分も大きかったので、ディールの際も社内よりも税理士事務所とのやり取りのほうが長かったくらいです。
M&Aを考えると、やはり(社員は)本業に集中してもらうのが一番いいと思います。もちろん管理部門も経営には重要ですが、サービスのクオリティに対するダイレクトなインパクトはないので、できるだけそこにはフォーカスせずに本来の事業に集中できる環境を作るのが理想的だと思いますね。
question 11
僕はずっとニッチビジネスをやってきました。それはユーザーのためになり感謝もされ楽しかったのですが、市場規模が小さいと、例えば広告の使い方など、どうしてもやることが小さくならざるを得ない。
次に何かやるとしたら市場規模の大きいものにチャレンジしてみたい、そのことだけは決めています。
狩俣 裕之 プロフィール
高校在学中より地域Webポータルサイトの運営を行い卒業後に株式会社シスエムアルテへ入社。国土交通省システム室へ3年間出向。
その後、テクトラジャパン株式会社に入社しERPコンサルタントに従事。2008年に自身で創業した株式会社TeraDoxを写真、映像、通信関連用品販売の最大手ハクバ写真産業株式会社へ2018年にバイアウト。
現在は、マレーシアを拠点にJapase Pte.Ltdの経営とスタートアップ企業へのエンジェル投資を行っている。